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エリン・マリー・ソルトマン: 若者が過激派になるとき ー それを防止するには

11/15(水) 9:49配信

TED

Erin Marie Saltman

翻訳

2011年 私は名前を変えました ハンガリーで極右青年キャンプに 参加するためです 当時 私は博士課程で 若者の政治的社会化 つまり 若者たちがポスト共産主義の世界で 政治的イデオロギーを 発達させる理由を探っていました 話を聞いた若者たちの多くが 極右に参加していきました そのことに私は驚きました そして その理由を知るために 自分もキャンプに参加したいと思ったのです


同僚が登録してくれたのですが 姓からユダヤ系だと 知られそうなので 名前のエリンをアイリーナに 苗字のソルトマンをショシュに変えました ハンガリー語で「塩からい」という意味です ハンガリー語では苗字が先に来ます つまり 私のコードネームは 「塩からいアイリーナ」になりました 私が選んだわけではありません


しかし 参加してみると その楽しさに さらに驚きを覚えました 政治のことは ほとんど語られませんでした たいていの時間は 乗馬を習ったり 弓矢の引き方を習ったりしていました 夜には音楽ライブがあり 無料の食事やお酒がふるまわれ また主流派の政治家の顔を標的にして エアガンを打つ練習もしました 彼らは すごくフレンドリーで 懐深いグループに思えました しかし 話題がロマ族(ジプシー)や ユダヤ人や 移民に関わることに及ぶと 会話はすぐに 憎悪に満ちたものになりました


それが 私の今の仕事につながり 問題提起をするきっかけとなったのです 「なぜ人々は暴力的な過激派の活動に 身を投じるのか? どうすれば うまく これに対抗することができるのか?」 ベルギーやフランスのみならず 世界中で起きている ― 凄惨な残虐行為や攻撃の余波の中にあっても 人々は こう考えがちになります 「犯人はソシオパスに違いない」 「もともと暴力的な 人格だったに違いない」 「育ちに問題があったに違いない」と しかし悲しいことに お決まりの犯人像など 存在しないことも多いのです 多くの人は高い教育を受け 異なる社会経済的背景を持ち 老若男女を問わず 家族持ちもいれば独身者もいます ではなぜ? 何が彼らを惹きつけるのでしょう? そういった問題や 今の時代において この問題にどう挑んでいくかについて お話ししたいと思います


研究から分かってきたことは 人が過激化する過程には さまざまな要因が 影響しているということです これらを「プッシュ」要因と 「プル」要因に分類しました 極右やネオナチに対する これらの要因は イスラム過激派やテロリスト集団に 対するものと かなり似ています 「プッシュ」(集団外に押し出す力)は 人々を脆弱にし 過激化のプロセスに進ませ 暴力的な過激派集団への参加に導きます そうさせる理由は 様々なことが考えられますが およそのところを言えば 疎外感や 孤独感や 自らのアイデンティティへの疑問― それだけでなく自分が属する「内集団」が 批判の対象であると感じ その「内集団」が 国籍や民族や 宗教を基盤としており 自分が属するより上の組織が 何も守ってくれないと感じることにあります


「プッシュ」それ自体が 暴力的な過激派を生むわけではありません なぜなら もしそれが真実ならば 同じ要因がロマ族にも 行動を起こさせるはずですが 彼らは暴力へと駆り立てられた 集団ではないからです そこで 「プル」(集団へ引き込む力)を 見るべきです 暴力的な過激派組織にあって 他の集団にないものは何でしょうか? じつはとても建設的なものなのです 一見すると 力を与えるようなことです たとえば兄弟愛や姉妹愛 帰属意識や さらには 精神的な目標が設定され 目標が達成されたあかつきには 理想郷が構築されるといった 神の思し召しが与えられます それだけでなく力が与えられ 冒険をしている感覚も与えられます


外国人テロ戦闘員を見てみると 若い男たちが砂漠で風に髪をなびかせ 女たちが彼らに加わり 夕焼けの中 彼らは結婚をします とてもロマンチックで 英雄の気分です 男女両方に与えられるプロパガンダです 過激派集団が得意とするのは 複雑で込み入っていて 微妙な世界の見方を 白と黒 善と悪に単純化することです 人は善になり 悪に立ち向かうようになります


ではISIS 別名ダーイシュについて 少しお話します なぜなら 彼らのコンテンツや策略を深く知ることで 過激化が起こる過程に対する 我々の見方が大きく変わったからです 彼らとても現代的な政治集団です 特徴のひとつはインターネット そしてソーシャルメディアの使い方です 断首のツイートやビデオをニュースの見出しで ご覧になったことがありますね インターネット自体は 人を過激化させるものではなく 単なる道具にすぎません オンラインで靴を買おうとして うっかりジハーディストにはなりません しかしインターネットは 触媒の機能を果たします


インターネットは 他にはない手段と規模 そして迅速性を提供します ISIS の登場で 突如として ジハーディストのイメージは マントに身を包んだ暗い人物像から変わりました 突如として 我々は彼らの台所にいたのです 彼らは夕食を取っていました 彼らはツイートしていました 外国人テロ戦闘員が 彼らの言語でツイートしていました 女性はそこで 結婚日のことや 子供の誕生について話していました 突如 ゲーム文化を目にすることになります ゲーム「GTA」の話をしていたのです


突如 家庭的な雰囲気になり 人間的になったのです 問題だったのは それに対抗しようとして 政府やソーシャルメディア企業の多くが 検閲を試みたことです テロリストのコンテンツを どう排除すれば? いたちごっこになりました アカウントを停止すると 次のアカウントができました 酷い例では 25番目のアカウントまで 行ったこともあります あらゆる所へコンテンツがばら撒かれました


しかしまた 危険な傾向もありました 彼らはソーシャルメディアの ルールや規制すら熟知していました リクルーターとの他愛もない会話が 主流のプラットフォームから始まりますが その会話が違法なものに変わるときを境に より小規模で 規制が緩く より暗号化された プラットフォームに移るのです 突如 会話を追跡できなくなります これが 検閲のもたらした問題です 検閲以外の 別の方法が必要です


ISISは国を作ろうしている点でも 革新的でした 彼らは戦闘員を 募集しているだけではありません 国家樹立を目指しているので 構成員として求める人物像が いきなり広範囲になるわけです 戦闘員だけではなく 建築家やエンジニア 会計士 ハッカー そして女性が必要です 過去24ヶ月 特にこの12ヶ月で 女性の参加がとても増えています ある国では 今では 参加者の4分の1が 女性なのです 我々が テロ集団への参加を 防ごうとしてしている相手自体が 様変わりしているのです


悲観的なことばかりではありません 残りの時間は 建設的なことを お話したいと思います 過激主義を予防し 対抗するための新機軸です


予防は 対抗とは別物です 医学用語を思い浮かべてください 予防医学の意味するところは 過激化の作用に対し 自然な抵抗力を身に付けることです 一方 すでに暴力的な過激派の イデオロギーに傾倒している 症状や前兆が出ている人には 違った対処法が必要となるでしょう ですから 予防措置では 非常に広範囲の集団を対象として 抵抗力が身に付くような アイデアに触れさせます ところが ネット上で特定のことに疑問を持ち 同意をしはじめている人や または もうカギ十字の刺青が入っている人や 集団にどっぷりはまっている人には これではうまくいきません どういうアプローチがあるでしょう


各レベルに応じた3つの例を通じて 彼らと関わって行くために どんな新しい方法があるかを お話ししたいと思います


ひとつは「過激派を語ろう」 我々が開発に協力した教育プログラムです カナダ発のもので 教室内での対話をうながすように 意図したものです 物語の形式を使います その理由は 過激主義とは何かを 若い人々に説明するのは ことさら 難しいからです 我々には元過激派や 過激主義を止めた人たちとの人脈があります 彼らの物語をビデオで流し クラスへ問いかけて その題材について 会話を始めてもらいます


2つの例があります ISISのために戦った― 息子さんを亡くした クリスティアンの例と かつて とても暴力的だった 元ネオナチのダニエルの例です 登場人物は自分の人生や 現状、後悔について問いを投げかけ 次に生徒たちに対話を促します


中間レベルの人々の場合を見ましょう 実際 我々には市民社会からの 多くの声を必要としています ネット上で情報を求めている人々や イデオロギーに関心を 示し始めている人々 アイデンティティの疑問を持つ人々に どう関われば? どうやって代わりとなるものを 提供するのか? 大きな市民社会グループの声をとりまとめて クリエーターや技術者 アプリ開発者 芸術家 コメディアンとともに 本当に特化したコンテンツを 作ることができ ネット上でとても戦略的に選んだ 視聴者に向けて広めることができます たとえばイスラム恐怖症について 面白おかしく描いた風刺動画を作成します 動画のターゲットは 15歳から20歳のネットユーザーで 白人至上主義の音楽に関心があり マンチェスター在住というところまで 絞り込みます


マーケティングツールを使えば 非常に具体的に いつ コンテンツを閲覧したり視聴をしたり どんな行動をしたかが分かります ターゲットは 平均的な人ではなく 我々とも違う属性を持つ ― 特定の閲覧者に届けることを狙います


もっと先に進んだ人には 「One to One」という 試験的プログラムが開発されました 元過激派だった人々を取り込み ネオファシストやイスラム過激派に 指定されたグループへ 直接 接触してもらいました Facebook メッセンジャーを使って 直接メッセージを送りました 「君が行こうとしている所 僕もいたことがあるよ 何か聞きたいことある?」 この種の関わり方をすると 殺害脅迫を受けることを恐れていました 元ネオナチに「調子はどう?」と 言わせるのは 少しばかり危険です しかし 約60%の人々が 接触に対して反応し その中でも約60%の人々が つながりを保っています つまり 接触が もっとも難しいとされる人々から 彼らがしていることについて聞き出し 組織に対する― 疑いの種を植え付けながら これらの話題について話すことで 別の行動の選択肢を与えていたのです これが非常に重要なことなのです


我々がやろうとしていることは 思いもよらぬ人達の 協力を得ることです すばらしい活動家たちが世界中にいます しかし 彼らのメッセージは 戦略的ではなかったり メッセージが意図する相手に 届かないこともしばしばです そこで元過激派たちとの人脈を通じて また さまざまな国々の若者たちの 人脈を通じて働きかけます 彼らの協力を得て 技術分野の人たちが 芸術家やクリエーターやマーケッターと共に 貢献してくれるのです このような協力体制によって より頑強かつ挑戦的に 過激主義に対抗できるのです


観客の皆さんの中に もしグラフィックデザイナーや 詩人や マーケッターや 広報の仕事をしている人や コメディアンがいらしたら 協力できる分野ではないと 思わないでください 今あるそのスキルが 過激主義を効果的に抑止するために まさに必要とされているかも しれません


ありがとうございました


(拍手)


テロリストや過激主義者の全員が、生来暴力的なソシオパスというわけではありません。整ったパターンに当てはまらないプロセスによって、人々は意図的に集められ、過激化しているのです。エリン・マリー・ソルトマンが、人々を過激派集団に参加させる「プッシュ」「プル」要因について議論し、そして過激化への予防と対抗に関する新機軸について語ります。 ( translated by Shiho Kioka , reviewed by Tomoyuki Suzuki )

動画撮影日:2016/6/18(土) 0:00
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