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ロナルド・サリヴァン: 無実の人々を刑務所から救い出すために

1/9(火) 15:38配信

TED

Ronald S Sullivan Jr.

翻訳

想像してみてください― 19時間も車を運転して ディズニー・ワールドへ 2人の子供を連れて行くことを 走り出してまだ15分しか 経っていないのに 必ずといっていいほど 誰かがこう尋ねます 「まだ着かないの?」


(笑)


毎度のことで いつも答えは同じ― 「まだだよ」 でも いつかは着きます とても とても 「楽しい」時間を過ごして また19時間かけて 家に戻ります ところが 戻ってみると 警察が待ち構えていて あなたが犯罪を 犯したと責め立てます その事件が起きたとき あなたはフロリダにいたのに 聞く耳を持つ人になら誰にでも あなたはこう訴えます 「私はやっていません! できるわけがない! 子供を連れて ミッキーやミニーと 楽しんでいたんだから!」 でも 誰も信じてくれません 結局あなたは逮捕され 裁判にかけられ 有罪となり 判決を下されます 刑務所に入れられて 25年経った頃 ようやく誰かが証拠を見つけ 事件が起きたとき あなたがフロリダにいたことを 立証してくれます そこで


ハーバード大学 ロースクールの教授として 私が数年前から続けているのは 誤って有罪とされた 無実の人たちを救い出す活動です たとえばジョナサン・フレミングは ニューヨークのブルックリンで起きた 殺人事件で有罪とされ 24年と8カ月を刑務所で過ごしました 彼は子供たちと ディズニー・ワールドへ 行っていたのに どうやって証明できるのか? 逮捕されたとき 彼が後ろポケットに 入れていたものの中に レシートがありました 日付が入っていて ディズニー・ワールドにいたことが 分かるレシートです これは警察のファイルに保管され 検事のファイルにも コピーがあったのですが 公選弁護人の手には 渡りませんでした 実は レシートの存在に 誰も気づかず 20数年も手つかずでした ファイルを調べていた 私のチームがレシートを見つけ 事件を調べ直したことから 犯人は別の誰かだと 分かったのです フレミングさんは確かに ディズニー・ワールドにいた だから今は 自由の身です


もう少しいきさつを説明しましょう ブルックリン地区検事長から 3年ほど前に電話があり ある仕組みを作る仕事に 興味はないかと聞かれました 「有罪判決再検証ユニット」 というものです 「やります」と答えました 有罪判決再検証ユニットは 基本的に検事局に設置され 検事が過去の裁判を見直して 誤りがないかを調べます 最初の1年で 私たちは誤った有罪判決を 13件ほど発見し 何十年も刑務所で 過ごした人たちを 全員釈放させました ニューヨークの歴史上 最も多い数です このプログラムは今も続いていて これまでに釈放されたのは21人― 自由を奪われて 相当な年月を 過ごしてきた人たちです


別の方も何人か紹介しましょう このプログラムを通して 私が出会った人たちで その1人はロジャー・ローガンです 刑務所に入れられて 17年が過ぎたとき ローガン氏は私に 手紙を書きました 内容はごく簡単なものでした 「サリヴァン先生 私は無実です 罪をでっち上げられたんです 私の事件を調べてもらえませんか?」 一見すると ごく単純な 事件のようでしたが これまで調査した事例からすると 目撃者が1人だけという事件は 間違いやすいのです それだけで無実とは言えませんが もう少し詳しく事件を 調べた方がよさそうだということです


だから そうしました 事実関係は比較的単純でした 目撃者の女性は銃声を聞いて 隣の建物に走って行き 振り返ったとき ローガン氏の姿を 見たと言いました ローガン氏は有罪になり 17年あまりを刑務所で過ごしました でも 目撃者は1人だけだったので 私たちは調べ直しました 現場に人を送って調べると 理屈に合わない点がありました 穏当な表現を心がけますが たとえ ウサイン・ボルト選手でも 目撃者がいたという場所から もう1つの場所までは 走れなかったでしょう いいですか? それで 証言は正しくない と分かりました それでも まだ無実だと いうことにはなりません でも 目撃者に 信用できないところがあると分かりました そこでファイルを見ていくと ある文書に番号が 書かれていました 目撃者に関する 記録の存在を示す番号です デジタル化されていない書類を 20年さかのぼって調べ それが何の記録かを探りました そして明らかになったのは 犯人を目撃したという日に 目撃者の女性が収監されていた という事実です ローガンさんは17年間 刑務所に入れられたのですよ


最後に紹介するのは 2人の少年の事件です ウィリー・スタッキーと デイヴィッド・マッカラムです 逮捕されたとき 2人は15歳でしたが 有罪判決が取り消されたのは 29年後です この事件もやはり ちょっと見には ごく単純そうでした 2人は自白していました でも これまでの調査からすると 親が立ち会っていない 少年の自白は あまりあてになりません DNA検査でこのことが 何度も明らかになっています


だから 私たちは詳しく調べました 調書を見直すと 自白の中に 彼らの知りようのないことが 含まれていました それを知っていたのは 警察と検事だけ 実際に何が起きたのかが 分かりました 誰かが2人に そう言わせたのです それが誰なのか どの人物かは分かりませんが ともかく 自白を 強要されたのだと 私たちは判断しました それから 改めて鑑識と 徹底的な捜査を行い 別の2人を発見しました もっと年齢が高く 身長や髪型も違う2人の人物が 真犯人だったのです あの少年たちではありません


私はその日に 裁判所へ行って 「取消の審理」に出席 そこで有罪判決が 取り消されました 裁判所へ行ったのは この目で見たかったから― マッカラム氏が法廷を 歩いて出て行くところをね だから 裁判所へ行きました 裁判官の言葉は いつもと同様でしたが 今回は特別な意味を 帯びていました 判決を読み上げた後 裁判官は顔を上げて 「マッカラムさん」と呼びかけ 素晴らしい言葉を 発しました 「あなたは これで 自由です」 想像できますか? 30年近くも経った後で 「あなたはこれで自由です」 彼は法廷を出て行きました


悲しいことに もう1人の被告 スタッキー氏は 歩いて外に出られませんでした スタッキー氏は獄中で 34歳で亡くなったので 被告人側の席には代わりに 母親が座っていました このときのことを私は 生涯忘れないでしょう 彼の母親は体を揺すりながら こう言っていました 「あの子じゃないと 分かっていたよ あの子じゃないと 分かっていたよ 」 確かに 彼女の息子ではなかった 別の2人がやったことでした


有罪判決の整合性を 見直す作業で私たちが― 私が学んだのは 正義はひとりでに 行われるわけではないということ 正義を実現するのは 人だということです 正義とは ただ空から降ってきて すべての物事を正してくれる ようなものではありません 正義が降ってくるのなら 彼は獄中で死にはしなかった 正義とは 善意を持つ人々によって 行われるものです 正義は決意です 正義は決意なのです 私たちこそが正義を 実現するのです


ここでお話しした3つの事件の ぞっとするところは ほんの1分だけ 費やしていればよかったこと― 1分だけ余計に時間をかけて 誰かがファイルを調べてさえいれば レシートが見つかった はずだということ たった1分間余計に ファイルを調べて レシートを見つけ 公選弁護人に渡せば よかったのに 誰かがほんの1分を費やして 自白の録画を見て 「あり得ない」と言えばよかった たったの1分です そうしたら スタッキーさんは 今も生きていたでしょう


私はお気に入りの詩の 1つを思い出します ベンジャミン・エライジャ・ メイズがよく語る詩で 題は「神の1分」といい こんな内容です 「私には1分しかない そこにあるのは60秒だけ 私はそれを強いられ 拒絶できない 探し求めることも 選び取ることもしなかった でも それを使うのは私 それを失えば苦しみ 無駄にすれば釈明が必要 ほんのわずかな1分ながら そこには永遠がある」


もし私が指図できる立場だったら すべての人に向かって こんな風に言いたい 「毎日 毎日 たった1分間 余計に時間を使って 正義を行いなさい」 無理はしなくていい― 一生の仕事として やっていく人もいます 公選弁護人のように 日々 正義を行なう人たちです でも どんな職業についていても 少し手を止めて 少しでも 正義を行ってほしい 職場の雰囲気を 良くしてほしい 性差別的な言動があったら 笑うのでなく 声を上げてほしい 誰かが落ち込んでいたら 引き上げてやってほしい 毎日 ほんの1分間 余計に使えば 社会はとてもいい場所に なるでしょう


お見せしたいものがあります ここに写っているのは デイヴィッド・マッカラムで 刑務所から 解放された日の写真です 30年も経って やっと 抱き合えたのは それまで触れることも できなかった姪です そのとき 私は彼に尋ねました 「最初にしたいことは 何ですか?」 「歩道をただ歩きたいですね 誰にも行き先を指図されずに」と 彼は答えました 憎しみの言葉ではありませんでした ただ歩道を歩きたい と言ったのです


マッカラム氏とは 2週間前に話しました ニューヨークに行ったんです 自由の身になって ちょうど2年目の記念日でした 私たちは語り合い 笑い 抱き合い 泣きました 生活は順調のようです 私たちと会って 1つ教えてくれたのは 彼がいま 生涯をかけて 全力で取り組んでいる 活動のこと― それは 誰も正義に反して 拘禁されないようにすること


みなさん 正義とは 決意なのです


ありがとうございました


(拍手)


ハーバード大学ロースクールのロナルド・サリヴァン教授は、裁判で誤って有罪とされた人々を刑務所から解放する戦いを続けており、これまでに救い出した無実の人たちの数は約6000人に上ります。この人たちがどのようにして(そして、なぜ)身に覚えのない罪で刑務所に入れられ、彼ら自身と他の人たちの人生にどんな影響が及んだかという、心揺さぶる話をサリヴァン教授は聞かせてくれます。世界をほんの少し公正な場所にするために私たち全員が、どんな形であれできることを毎日やるべきだという根本的な義務についてのトークに耳を傾けましょう。 ( translated by Yoichi Fukuoka , reviewed by Masaki Yanagishita )

動画撮影日:2016/10/21(金) 0:00
TED