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ジャヴェード・アクタル: 言葉のもつ力

5/16(水) 10:20配信

TED

Javed Akhtar

翻訳

(シャー・ルク・カーン) 次に紹介するスピーカーは 言葉の持つ価値というものを 誰よりもよく知り 理解している方です 40年以上にわたる執筆経験の中で この方は 美と多様性を備えた言葉を 選んでこられました 「ぱっと咲く一輪のバラ」や バッチャン氏のパンチの効いた台詞や (笑) ウルドゥ語のベストセラー詩集 ジャヴェード・アクタルさんだけが 表現し得る言葉です (拍手) はい (拍手) 温かくお迎えください ジャヴェード・アクタルさんの登場です (拍手喝采) (ジャヴェード・アクタル)諸君 このテーマは興味深く 私が心から大切にしているものです 奇妙なことですが 我々は 目の前にある 身近な物事を 深くは考えないことが よくあります 「なぜ空気は透明なの?」 と問う人がどれ程いますか? 「なぜ水は濡れているの?」とか 通り過ぎたものが何か どれ程の人が考えるでしょうか 経った時間について「何がやってきたのか? 何が過ぎ去ったのか?」などと 疑問に思う人がどれ程いるでしょう? 同様に 我々が常時 話し 聞いている言葉について 「この言葉の本当の意味は」 と考えたことがどれ程あるのでしょうか? 言葉とは奇妙なものです 我々人間はある時 ある動物を目にし それを 「キャット」と呼ぶことにしました しかし「キャット」は音に過ぎません その動物とは無関係です それでも「あれはキャットだ」 と決めたのです この音でこの動物を 識別することにしたのです それから 半円を作り ピラミッドの形(Λ)を書いて 半分に切り 次に直線を引き もう一本下に引いて 「CAT」と書きました これらの交差する線の間を音で埋め そしてその音に 意味を与えたのです さて 「キャット」と同様に 愛や怒りや考えや アイデア 痛み 苦しみ 幸せ 驚きといった あらゆるものに 音が関連付けられてきました 音は 交差する線の中に 調和していきました 文字と呼ばれるものです 全く共通点のない3つのものが 一つの言葉を創るために 結び付きました まず それ自体は意味をもたない音と 概念とが足され そして直線 曲線が追加され 言葉を形成したのです 驚くべきことです! 言葉というものは時と共に 人間らしさを備えるようになったのだと 私は考えるようになりました 付き合う人を見ればその人が分かります 言葉もそうです この言葉と仲良しなのは? 他にどのような言葉が 一緒に使われてきたのか? 平均的な知性を持った人は 普通の名詞や動詞から 関連する事柄を直ちに 挙げることができます どこで見聞きしたのか? 何を思い出させるか? 繋がりは? 最後に会話で使われたのはいつか? それに関連した 自分の経験は? 覚えのある言葉を耳にすると 様々な記憶が蘇ります 良い作家 良い演説家というのは 特定の言葉を用いるタイミングを 理解しています 平均的な知性なら 特定の事柄を連想し 特定の記憶が思い起こされるような言葉です それで言葉の周りに 世界を創ることが出来るのです 言葉のもつ力とは何でしょう? 母の子守唄であろうが 政治家の演説 愛する人からのラブレター 誰かに対する苦情であろうが 抗議デモの呼び声であろうが 怒り 悲しみ 幸せ 驚き 一体感 疎外感 世のあらゆる事 世のあらゆる感覚 あらゆる感情 反応は 言葉として表現されるまで 何の意味も持ちません 他人に伝える以前の話です 言葉は思考ではありません レンガそのものは 家ではないのと同じことです しかし家はレンガで出来ています レンガが少ししかなければ 小さな家を建てることになるでしょう 語彙が豊富なほど 思考がいっそう明瞭になり より明確に伝えられます 近頃 特に若い人たちから よく聞く言葉があります 「言ってる意味 分かるよね?」 いや 私にはさっぱり分かりません 「言ってる意味 分かるよね?」 では言葉が尽きかけています 現代では 何事も目まぐるしく 変化しています だから 会話も速くなければなりません しかし 悲しい事に この速度は 言葉の深みを犠牲にして 獲得してきたものなのです より速く話せば 全てが速くなり すると言葉も速くなるため コミュニケーションも速くなります しかし速度が上がることで 深みが失われてきています つまり 相手に思いが至らず 独りよがりになってしまい 自身の気持ちや考えや感情を 詳細かつ明瞭な方法で はっきりと伝えられなくなります 言葉というものは それが存在する限り 単に意味を表す以上の役割があります 言語や語彙を運ぶ ベルト・コンベヤーでもあるのです 言葉は文化の表れであり 伝統や遺産の表れでもあり 何世代にもわたり蓄積された 文化的な豊かさの表れでもあります どれもが 言葉によって 先々に伝えられていくのです もし ある人から 言葉を奪えば その人は文化や歴史から 隔絶されてしまうのです そんな事が まさに今 我々に起きているのです このように 言語は非常に強力なものです 言葉は極めて強力なのです しかし 言葉自体に 善し悪しはありません 言葉への愛を持つようになり その力を理解すれば 気づくはずです この世の全ての出来事は 言葉によって起こるのだと 言葉がなければ 我々と動物を区別するものは なくなるでしょう もちろん 我々も動物ですが 唯一の違いは 我々は言葉を通して 経験や学びや知識を 次世代に 伝えられるということです 我々は本能のみで 生きているのではありません 何世代にも渡って 徐々に蓄積されてきた― 我々の知識や経験は 次の世代へと伝えられていきます その手段が言葉なのです もし言葉がなければ 他の種に対する優位性は徐々に 失なわれることでしょう 言語を持っているからこそ 我々は進歩できたのです もし言語がなかったなら 今あるこの世の中には至らず 人類が登場した時と 同じ状態のままだったでしょう では 言語が意味するものは? 言葉です! だから 言葉を大切に 言葉を愛し 良き友になるのです 言葉には注意深く耳を傾け 意識しながら話すことです ありがとう! (拍手) (シャー・ルク)ジャヴェードさん 本日はお越しくださり 素晴らしいお話を ありがとうございました ジャヴェードさんとは 約25年前 僕がムンバイに来た時からの知己です (ジャヴェード) 当時はとても若かった (シャー・ルク) 今でもとてもお若いですよ 僕は 沢山の教えや 価値観 そして 多くを ジャヴェードさんから得てきました ちょっとした出来事を紹介しましょう ある映画の収録中に ジャヴェードさんが お怒りになりました 僕達のような無学な連中が 口出しをして 「この言葉を使ってみては」 などと言うと 時折お怒りになります 映画の題名を 『Kuch Kuch Hota Hai』 (何かが起きてる)としたところ 全くお気に召さなかったのです 一時期は 僕達若造に対し 相当お怒りで― 今でもこの方にとっては 若造ですが― こう やり返されたのです 「心が騒ぎ 眠れない どうしたものか? おや 何かが起きてるぞ こんなバカバカしいものが望みか?」 実は この曲の言葉は全て お怒りのジャヴェードさんから 吐き出されたものでした 曲は大ヒット ですから ジャヴェードさんが 怒りに任せて言葉を吐いても それは金言に変わるのです それがこの方の才能です (歓声) (ジャヴェード)今おっしゃった出来事は まさに事実です この題名 『Kuch Kuch Hota Hai』を 耳にした時はショックでした 品格が足りないと 感じたのです (笑) そういうわけで正直なところ 題名のせいで こんな大ヒット作を 降りてしまい後悔しています この題名が理由で 私は作品を降りたんです 後に少し決まりが悪くなり シャー・ルクも 反省したそうです だから過去は水に流し 他の作品で一緒に仕事をすることにしました その作品が 『たとえ明日が来なくても』です シャー・ルクに伝えました 「他は全て結構だが 君には2つ借りがある 『Kuch(何か)』2つ分だ」 (笑) 「だから1曲書いて その2つを返すよ」 こういうわけで 特別に書いた曲が 『Kuch to hua hai, kuch ho gaya hai』です (拍手喝采) これで借りは返しました (シャー・ルク)みなさん ジャヴェード・アクタルさんに盛大な拍手を (拍手)


「言ってる意味 分かるよね?」という表現がなぜ問題なのでしょう?
伝説的な詩人、作詞家で脚本家のジャヴェード・アクタル氏が、私達が言葉を使う力を失いつつあるのはなぜかと問いかけ、また、世代から世代へと文化を伝えてくれる、言葉という魔法のような道具を用いて、互いに意思疎通を図り理解し合おうと呼びかけます。 ( translated by Mami Matsuda , reviewed by Tomoyuki Suzuki )

動画撮影日:2017/12/17(日) 0:00
TED