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ペール・エスペン・ストクネス: 「終末論疲れ」を気候変動に立ち向かう行動へと変える方法

7/4(水) 9:48配信

TED

Per Espen Stoknes

翻訳

どうしたら人々を気候変動問題解決に 巻き込めるでしょうか?


2つのちょっとした実験から 始めたいと思います 皆さんは私の話を聞いて 違いを感じて下さい 良いですね? 始めましょう


「二酸化炭素の値は上昇しており 今およそ410 ppmの濃度です 代表濃度経路(RCP) シナリオ値8.5を回避するには 迅速な脱炭素化が必要です 66パーセントの可能性で 「2度目標」を達成できる 世界の炭素収支は 約800ギガトンです」


(笑)


では次は違った角度から


「私たちの地球は 不毛の地へとなりつつあります 巨大な嵐 殺人的洪水 緑を焼き尽くす山火事 灼熱の太陽が放つ熾烈な熱波が 私たちに襲い掛かります 2017年の気温はすでに予想外に高く 気候変動科学者たちは怯えています 二酸化炭素排出削減に 残されているのは3年だけです 3年です そうしなければ私たちの地球は 煮え繰り返る地獄へと化してしまう」 では


(拍手)


皆さん 私の語り方の違いをどう感じましたか? 1つめは他人ごとのような気がして ただ困惑しただけでは? 一体何を言ってるんだ?と もう一つは 恐怖を感じたり ただ無力さを感じたりしたのでは? 質問を繰り返すと 「どうやったら気候変動問題解決に 人々を巻き込めるだろう?」 二つの語り方が 効果的で無いのは何故でしょう?


気候変動対策の一番大きな障害は 皆さんの頭の中にあります 急速に成長を続ける 心理・社会学の研究に基づき 今まで 人々を問題から遠避ける 5つの心理的障壁を 研究してきました [5つの心理的障壁(Defences)]


人々が気候変動のニュースを 聞かされると まず最初の拒絶反応が起こります まず「距離(Distance)」 を置こうとします 気候変動のニュースを聞くと 何か遠く離れた宇宙のことのように 北極の氷やホッキョクグマを思い浮かべ 遥か未来のように 2100年を思い浮かべます 巨大でゆっくりとした変化 数ギガトン 数世紀といった大きさ 自分が今いるこの場所に 関係は無いと考えてしまいます 自分からは遠いのだから 自分が影響できる範疇外のことのようだ 無力に感じてしまう 自分にできることは何もない 私たちの日常生活では ほとんどの人は 身近な事柄を考えがちです 仕事や子どものことや フェイスブックでいくつ 「いいね!」がもらえるかなど 現実味のある事柄です


次の心理は「運命(Doom)」 気候変動は大抵 迫り来る災厄として描かれます 損失 費用 犠牲 我々は恐怖を感じます しかし恐怖を感じた後 私は この話題そのものを 避けてしまいたいと考えます 恐怖に訴える 気候変動コミュニケーションが30年続いたあと メディア記事の80%以上は 未だにこの災害フレーミングを用いていますが 人々はそれに慣れてしまい その多用によって 感覚が麻痺してしまいます 私たちの多くが いうなれば 黙示録的描写の氾濫の中で 「終末論疲労」に 陥ってしまっています


3つめの自己防衛は 「認知的不協和(Dissonance)」 化石燃料の使用が 地球温暖化の一因であり 運転 飛行機に乗ること 牛肉を食べることといった 私たちの行動が 温暖化に加担していると知ると いわゆる認知的不協和が頭をもたげます 心中の居心地の悪さ 偽善者だという感覚を覚えます この不快感を取り除くために 脳は何とか正当化しようと考え始めます 例えば 「隣の家の車はもっと大きい」とか 「食事を見直しても 自分だけなら 何の足しにもならないさ」とか 気候科学そのものを 疑うことだってできます 「気候なんて常に変動するものさ」


こうした正当化で 私たちは気分が良くなりますが 同時に 真実を犠牲にしています このように行動が態度を変容します 私の個人的な 認知的不協和が起こるのは オスロからニューヨークへ そして再びオスロへと 飛行機で往復して 気候問題の講演をしているのに 気づく時です


(笑)


たった14分の講演にですよ


(笑)


そういうわけで現実否定(Denial) したくもなります


(拍手)


もし私たちが口をつぐんで 気候変動の事実を無視したり嘲笑ったりすれば 恐怖と罪悪感から逃れられる かも知れません 現実否定は知性や知識の 欠如から生じるのではありません これは心の状態です 厄介な事態に気づいているけれども それを知らないふりをしてしまうという ですから 二重生活とも言えます 知っていて 知らないふりをする これは往々にして 家族やコミュニティといった この難しい問題から目を逸らそうという 他者によって増長されます


最後に アイデンティティ(Identity)です 危機感を持つ気候問題活動家たちは 政府に何らかの規制や炭素税などで 行動をとるように要求しています しかし考えてみて下さい 例えば保守的な人々が 政府は今以上に大きくなるべきだと 活動家が言うのを聞くとどうなるか 特に豊かな西欧の民主主義文化では 彼らは気候変動科学を信じない傾向にあります どういうことでしょう? 例えば私が保守派だったら 私はおそらく小さな車や大きな政府ではなく 自分に見合った大きな車と 小さな政府を好むでしょう 気候科学者たちがやって来て 政府の役割を拡大すべきだと言えば ますます科学を信じなくなるでしょう こうして文化的アイデンティティは 事実を塗り替え始めます その人の価値観が事実を蝕みます 私のアイデンティティは いつなりと真実を踏みにじるでしょう


「5D」が私たちを問題から遠ざける メカニズムを観察した後は それを乗り越える方法を考えましょう 新しい研究は 私たちがどのように この5つの防御を反転して より頭に入りやすい 気候問題コミュニケーションを 実現できるか示します ここから面白くなりますよ 「5つのS」 という 実証に基づく効果的な解決策を見つけました


まず問題との距離を ソーシャル(Social)へと変換します 気候問題を身近で個人に関わる 緊急のものだと感じさせるのです これは解決策にとってプラスとなるような 社会規範を広めることで可能になります もし私が 友人や隣人たち あるいは皆さんが 行動を起こすと信じられたら 私もそうするでしょう これは例えば 太陽光発電パネルの例に見ることができます 発電パネルは家から家へと ウイルスのように広まっていますね 伝染するんです これが「新常識(ニューノーマル)」を作る ピア・トゥ・ピアの影響力です


次に 悲観主義を支援主義 (Supportive)へと変えるんです 災害やコストといった 非効果的なフレーミングよりも 気候問題は人間の健康に関係しているものだと 捉え直すことができます 例えば 植物由来の美味しいハンバーガーは 健康にも気候のためにも良いものです 気候問題を 新たな技術を導入したり 安全性に関する仕事や 新たな雇用を創出する機会だと 捉えることも出来ます 太陽光発電産業は驚異的な成長を遂げており 3百万の雇用創出を最近達成しました 協力するような心の動きをつくるには バランスの取れた情報が必要です 3つの前向きで支援的な フレーミングを それぞれの気候変動の脅威について 示すべきです


そして認知的不協和を より単純(Simple)なアクションへ 反転できます これはよく「ナッジ」と呼ばれます 選択肢をうまく設計することで 気候に優しい行動が 普通で最適なものとして 選ばれるようにすることです 気候に優しい行動が 簡単で意識せずに 選ばれるようにすることです 例えば食糧廃棄問題を例にすると もしお皿や箱のサイズが少し小さくなれば ビュッフェなどで食べ物の 浪費は劇的に減るでしょう 小さなお皿に載った食べ物の量は より多く見えますが 大きな箱の中では ほんの少しにしか見えないので もっと増やしたくなるものです より小さなお皿を使えば 食糧の浪費を大きく抑えられます このような小さな「ナッジ」が何百とあります ポイントは より多くの行動がナッジされると 認知的不協和が鎮まることです それから進歩を可視化するよう シグナル(Signal)を調整することで 現実否定を反転させることができます 問題解決へどれだけの進歩が出来ているか モチベーションを促す フィードバックを与えるのです 例えば車両の二酸化炭素排出を抑制したとか ビルのエネルギーの無駄遣いを 抑制したとかです Duckyというアプリがこれを可能にします それに行動を記録していけば あなたの仲間や会社の達成した 成果が可視化されるので リアルタイムで シグナルが受け取れます


最後に アイデンティティです これは効果的な物語(Story)を 用いて変えられます 私たちの脳は物語が大好きです だから「こうなりたい」という 将来の世界の物語や 実際に変化を実現している様々な ヒーローやヒロインの物語が もっと必要なのです


誇らしいことに私の故郷オスロは 全ての交通機関を電気化するという 大胆な旅路へ一歩を踏み出しました 自動車 バイク バス 全てです クリスティーナ・ブーは この運動の先頭に立つ1人で 何年も ノルウェー電気自動車協会の 事務局長として 毎日戦って来ました 今やイギリス、フランス、インド、中国も 化石燃料車の販売を 禁止する計画を発表しました これは大きな動きです オスロでは友人や周囲の人へ布教熱心な 電気自動車オーナー達の 熱意が感じ取れます こうして「物語」が 「ソーシャル」に戻ります


世界中の数千人もの気候変動問題を語る人々が こうした解決策をそれぞれ 使い始めています しかし個々の解決策だけでは 気候変動問題を解決できないことは明らかです 法整備や解決策に向けて より強力なボトムアップの支援が必要なのです これが人々を巻き込むことが 欠かせない理由です


私はこのトークを 気候変動問題を2通りの語り方で始めましたが 他の語り口もあるんです それを披露しましょう それは気候問題を生きた大気と捉え直して 始まります 気候変動は私たちには関係の薄い 抽象的で遠い問題ではありません 私たちを包むまさにこの空気 この部屋で感じているこの 鼻腔で感じる空気 この空気は私たちの地球の皮膚です 地球の大きさ そして空気がその影響から私たちを守っている 宇宙と比べると驚くほど薄く リンゴの大きさに対する皮の厚みよりも はるかに薄く 空を見上げると果てしなく しかし美しく 呼吸のできる空気は ほんの8~11キロメートルの薄さで 巨大なボールを脆く包んでいます この皮膚の内側で 私たちは繋がっています みなさんが今吸った息には ガンジーが生涯に吸った アルゴン原子のうちの 40万個が含まれています この薄く 揺らめき 定まらぬ膜の内側で 全ての生命が養われ 守られています 水と生命に 丁度適した気温に保ち 制御し 青い海と漆黒の宇宙を隔て 雲は土壌が必要とする 何十億トンという水を保持します 大気は川に溶け込み 水をかきたて 森に水を届けます 世界的におかしくなっていく気候 怖れを感じ希望を失うのも もっともです でも今の惨状や損失を嘆いた そのあとは 未来を向いて気を取り直し 決意を新たにするのです 気候変動対策の新しいマインドセットは 抽象さや終末論といった足枷を捨て去り 科学を大切にし 新たな物語を語り始めることを 選ぶことにあります これは どのように地球温暖化を反転させ 削減していくかの物語です これらは これからの私たちの歩みの物語です 人々が 都市が 企業が 公的機関が 逆風に負けずに 大気を大切にする話です これは私たちの前進の物語です それがこの生きた大気に生きる 地球人としての 私たちのあるべき姿なのですから


ありがとうございました


(拍手)


気候変動に対処する最大の障害は、あなたの頭の中にあると心理学者であり経済学者のペール・エスペン・ストクネス氏は述べています。
彼は私たちが地球の終焉について考えないで済むための自己防衛の仕組みを長年研究しており、私たちを現実否定から呼び戻す地球温暖化についての新しい語り方をみつけようとしています。
終末論の物語から離れ、地球のために思いやりある行動を取ることが喜びであり個人にもできることだと感じる方法を、この楽しく有益な話から学びましょう。 ( translated by Eriko T. , reviewed by Masaki Yanagishita )

動画撮影日:2017/9/20(水) 0:00
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