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トレイシー・エリス・ロス: 1人の女性の怒りには何世代分もの知恵がある

7/4(水) 9:53配信

TED

Tracee Ellis Ross

翻訳

ある友人の話をします 彼女は60代の役者です とても聡明で 最高の女性で 思いやりのある人です クリスマスを控えた数日前 彼女は郵便局にいました クリスマス前ですから いつものように混んでいて 彼女は何かの用紙に記入するのに とても集中していたそうです すると突然 誰かが 彼女をどかしたのです 彼女の体を手でつかんで どかしたのだそうです どうやら その男性の探し物を 彼女が遮っていたので どかしたようでした 男性が声をかけたか かけなかったか 彼女に聞こえなかったのか... いずれにせよ 彼女が集中して用紙に記入していると 気づいたら 誰かに触られて どかされてしまったのです 彼女をどかしたおかげで 男性は探し物を手にして さっさと行ってしまいました


彼女は最初 唖然としたそうです そりゃ そうですよね それから 説明のつかない怒りが こみ上げてきたのだそうです 頭にきたのでもなければ 苛立ったのでもなく 「怒り」がこみ上げたと 彼女は言いました それから こう続けました 「もう 殴ってやりたいくらいだった うまく言えないけど 強い怒りを覚えたの でも理由が分からなくて その人に殴られてもないし 傷つけられてもないし 暴力を振るわれてもない どかされただけで 殴ってやりたいくらいの 怒りを覚えたの 少なくとも 追いかけていって 怒鳴りつけたかった」


その後 私はこの「怒り」について よく考えてみました 彼女の話を聞きながら 私もまた 怒りを覚えずにいられなかった理由と 「怒り」という言葉を 最近 よく耳にする理由を考えました そろそろ この場にいる― 男性の皆さんが 居心地悪そうにし始めましたね


(笑)


大丈夫ですよ もう少し聞いてください


この「怒り」という言葉は 去る米大統領選以来 私が反芻してきた言葉です 多くの女性もそうであるようです この怒りを覚えたのは 私の友人だけではありません 彼女の怒りに火がついたのは 何世代もの男性たちが 同意を得ることなく 女性の体を 好きにしてきたためです 男性が女性を好きにしていい という文化的土壌があり この場合においては 一見 たわいもないことに見えます 女性の体が食卓の塩のように 扱われたのです 「ちょっとどかすよ フライドポテトを取るんでね」


(笑)


ひどく悪質で 暴力的で 恐ろしい状況に比べれば たわいもないでしょう


皆さんの中には たわいもないことと 恐ろしいことの つながりは一体何だろうと 思う人もいるでしょう スペクトラムの対極に あるように思えるでしょう 共通点は まさにそのスペクトラムです たわいもないことこそが 恐ろしいことを生み出しているのです 女性たちは その2つの対極と その間にあるものに 耐えねばなりません


男性の皆さん あなたが携帯電話で 話している時に 誰かが近づいてきて 携帯を取り上げたら どうでしょう? 相手はこう言います 「おい なんでそんなに怒るんだ 電話をかけたいだけだよ 終わったらすぐ返すからさ まったく」 それから 誰かに 携帯電話を取り上げられるのが 例えば 1日に1回とか 1日に2回とか 時々 起こるとしたら? それに対する説明は 「いや だってさ いいケースしてんじゃん」とか 「ポケットから出してるのが悪い」とか 「ああ それが何? そういうもんだ」 だったりします なのに 携帯電話を取り上げる人のことは 誰も話したがらないのです あまりに単純化した話だとは 思いますが 言いたいことは分かりますよね 男性は好きにできることに 慣れきっているあまり やめることができないようです これは男性が本質的に 倫理観が薄いからではなく 多くの男性にとって これが非常に大きな盲点だからです


誰かが 女性を好きなようにする時 それが呼び覚ますのは 不快感や苦しみばかりでなく 口に出されてこなかった 母親たちの経験や 姉妹たちの経験 何世代にもわたる 女性たちの経験を 呼び覚ますのです 何世代にもわたって 女性たちが対処してきたのは 自分の方が物知りだと 思い込んでいる男性です 夫の所有物となったり 土地所有者の所有物となったり 年老いた白人男性に 女性器の運命を決められたりしました 何世代にもわたって 女性の体は 愛情と欲望の対象として使われ 私たち自身が 思いのままにすることは 許されませんでした 何世代にもわたって 向こうのルールに従おうが従わまいが ハラスメントや暴行など ひどい事柄に耐えざるを 得ませんでした 何世代にもわたって 女性の体は 殴打され 傷つけられる物であり 操られて どかされる物であり 敬意に値しない物として 扱われてきました 何世代にもわたって 体に沸き立つ怒りを表現できませんでした 私たちが この「怒り」を 覚えるのも当然です ここに人種差別の歴史を加えれば― 別に語られるべき 大きな問題ですが 事態は飛躍的に複雑になるでしょう


女性は手荒に扱われると 説明をつけようとするものです 一体何だったのかを 理解しようとします 「私たちのせいかも 考えてみれば 声をかけられて 気づかなかったのかも 過剰に反応しちゃっただけね 敏感になりすぎてる」 違います 違うんです 全然違う そんなことは全くないんです 女性は過剰に反応しているとか 敏感すぎるとか 理不尽だとか考えるように 教えられてきました 不愉快な行為に 理由をつけようとして 私たちは怒りを 飲み込んでしまうのです 怒りを頭の片隅に 追いやろうとするのですが 消えはしないのです 笑顔の練習をする間にも 怒りは居座り続けます 「ええ もちろん」 朗らかであろうとする間にも 「ですよね」 「ええ そうですとも」 女性は怒ってはいけないと されているからです


私の友人が覚えた怒りに 込められているのは 何世代もの間 憤り、苛立ち、激しい怒りに 直接向き合うことも 表現することも 許されなかった経験です 女性の体を好きにしていいと 誰かが 考える度に 現代の怒りに火がつくだけでなく 過去をも照らすことになるのです たわいもないように思われる 郵便局での一場面は 怒りの手榴弾なのです いいですか ドカーン!


現在 世界中の女性たちが 経験してきたことは もはや無視できない状態に 達しています 過剰反応だとか 「そういうものだ」と考える― そんな時代は もう終わったのです 男性の悪い行いに対して 女性が咎めを受ける― そんな時代は終わったのです 男性の悪い行いを改める責任は 男性にあるのです


(拍手)


潮流は変わりつつあります 今こそが その時です 同胞の女性の皆さん そして 優しい男性の皆さん 女性の権利の平等へ向かう 大規模な動きにおける― 今日この特別な場に 集うにあたって そして まだ見ぬ将来を 思い描くにあたって 私たちには違うことが 求められています


男性の皆さん 皆さんは女性の同胞です 変化に向けて 共に力を尽くしましょう 信頼に足る 内省的な同胞であらんことを 思いやりを持ち 開かれた心を持ってください 女性を支え 変化を進めるには どうしたらよいかと問うてください 必要な時には 助けがもたらされますように


そして 女性の皆さん 皆さんは ぜひ 自分の怒りを認識してください 言葉で表現していいのです 身の安全が確保された場所から 安全な方法で共有してください あなたの怒りは 恐れるべき対象ではありません その怒りには 何世代もの知恵が 込められています 怒りを外気に触れさせ その声を聞いてください


ありがとうございました


(拍手) ありがとうございました (拍手)


世界中の女性たちが経験してきたことは、もはや無視できない状態まで達している、と役者であり活動家のトレイシー・エリス・ロスは言います。この率直で堂々としたトークで、彼女はより良い未来を構築しよう、と男性と女性の両方に呼びかけます。 ( translated by Moe Shoji , reviewed by Misato Noto )

動画撮影日:4/10(火) 0:00
TED