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ケン・ロビンソン卿:教育に革命を!

10/10(水) 18:00配信

TED

Ken Robinson

翻訳

4年前 私はこの場にいました その当時 トークはまだネット配信されておらず 参加者に箱入りのDVDセットとして 配られました きっと大事にしまわれていることでしょう 取り出されることもなく


(笑)


トークの一週間後に クリスが連絡してきました 「トークをネット配信することになりました あなたのも配信して構いませんか?」「もちろん」


その後の4年間で あのトークは 4百万回ダウンロードされました 見た人の数ということであれば たぶんその20倍くらいになるでしょう そしてクリスが言うには みんな飢えているというのです 私のビデオに


(笑)


(拍手)


皆さんもそう感じませんか?


(笑)


だからこのイベントの間中ずっと 入念に準備していました では始めましょう


(笑)


アル ゴアは 私が講演したのと同じ4年前のTEDで 自然環境の危機の話をしました 私は自分の話の最後に そのトークの内容に触れました 今日はその続きから始めたいと思います なにせ18分しかないのですから ですから 先ほど申し上げた通り...


(笑)


彼の指摘は正しいのです 明らかに気候変動の重大な危機が存在します 信じられないと言う人は もっと外に出た方がいいですね (笑) でも環境の危機はもう一つあるのです 同じくらい深刻で 同じ種類の危機で 同じくらい緊急に対処しなければなりません それは... でも 皆さんは言うでしょうね「もう十分だ 危機は一つでたくさん 二つめは必要ない」 これは自然環境の問題ではなく もちろん自然環境も大事ですが 人の環境の問題です


他の多くの講演者たちもこの大会で 指摘していますが 基本的に 私達は自分の才能を うまく生かせていません 大多数の人は人生において 自分の才能が何なのかわからず そもそも才能があるとも思っていません 何の取り柄もないと思っている人に 出会うのは珍しくありません


私は世界を二つのグループに分けて見るようになりました 功利主義哲学者のジェレミー ベンサムは この考えを見事に言い表しました 「世界には2種類の人がいる 世界を二つに分ける人と そうしない人だ」 (笑) 私は分ける派です (笑)


自分の仕事を 楽しめない人が大勢います この人達は人生を黙々と 耐えて生きるだけです 仕事から喜びを見いだすことはありません 楽しむというより 耐えながら 週末が来るのを待つのです 一方で 仕事が大好きで 他のことをするなんて考えられない人もいます やめろと言われたりしたら 訳が分からないという顔をするでしょう 彼らにとってそれは 自分の存在に関わることだからです 「だけど これがあっての私なんです これをやめるなんて馬鹿げてる 一番本当の自分がここにあるんだから」 でもこのような生き方をしている人は多くありません それどころか 実際は このような生き方の人は少数派です その原因は


いろいろとあると思いますが 大きな原因の一つは 教育にあります 教育はある面で多くの人を その持って生まれた才能から 引き離すものだからです 人の才能は天然資源と同じで 深い場所に埋もれています 探さないと見つかりません 表面に転がってはいません 才能が現れ出る状況を作る必要があります 教育がそのための手段だと 思うかもしれませんが 多くの場合 そうなっていません 現在世界中で 教育システムの 改善が進められています でも十分ではありません 改善では役に立たないのです 破綻しているモデルを改良するだけだからです 必要なのは この場でも度々使われてきた言葉ですが 教育の「進化」ではなく 教育の「革命」なのです 教育は 全く別のものにならねばなりません


(拍手)


本当に難しいのは 教育を 根本的に改革することです 改革は難しいものです それはみんなが簡単だと思っていないことを しなければならないからです それは 私達が当然と思うもの 明白だと思うことに 挑戦することになります 改善や変革において 大きな問題になるのは 「常識」という とてつもなく強い力です 常識とは「ずっとそうやってきたんだから 他のやり方はない」と皆が思い込んでいることです


最近リンカーン大統領の素晴らしい言葉を知りました ここでリンカーンが出てくるのは皆さん嬉しいでしょう (笑) リンカーン大統領の1862年12月の 第2回米国連邦議会での演説です 私は当時の米国で何があったのか全く知りません 英国では米国の歴史を教えないからです (笑) 米国史を「抑圧」してるんです 政策として (笑) 何か大事件があったのだと思います 皆さんのうち 米国出身の方なら きっとご存じでしょう


リンカーンは言いました 「平穏な過去の時代の 定説は 嵐のような現在には役立たない この時代は 困難に満ちている 我々はこの時代とともに立ち上がらねばならない」 素晴らしいですね 「時代に対して」ではなく「時代とともに」です 「新たな事態には 新たな思考と行動をもって 対処しなければならない 我々自身の束縛を解き この国を救わねばならない」


良い言葉ですね 「束縛を解く」 意味はわかりますね? 私達みんなが囚われている考えがあります 私達はそういう考えを 自然なこととして そういうものと 思い込んでいます 私達の考えの多くは 現在の状況ではなく 前世紀の状況に合わせて形成されました しかし私達の心は いまだ囚われたままです ですから 私達は自らを束縛から解放する必要があるのです 言うのはやさしく 実行するのは難しいです 自分が何を当然と思っているかを知ることは大変難しいのです なぜなら それを当然のことと思っているからです


皆さんが当然と思っていることについて聞いてみましょう 25歳以上の方は どれくらいいますか? それを皆さん当たり前とは思ってないでしょう その歳にはもう慣れたとは思いますが では 25歳未満の方は? 25歳以上の方で 腕時計をしている方は手を挙げてください 大半の方がそうですね 同じ質問を10代の若者にしてごらんなさい 10代の若者は腕時計をしません できないとか 許されてないわけではなく 自分でしようと思わないのです その理由はこうです 25歳以上の人は デジタル化以前の時代に育ったので 時間を知りたければ 時を告げるものを身につける必要がありました 今の子供たちは デジタル化された世界に住んでいますから 時間はどこででも知ることができます 腕時計をする必要がないのです もちろん 皆さんも腕時計は必要ありませんが 習慣的にし続けているのです 私の娘のケイトは20歳ですが 腕時計などしたことがありません 腕時計の必要を認めないのです 彼女は言います 「え なに その機能1個って?」 (笑) 「ダサいもいいとこね」 「そんなことないよ 日付だって分るんだから」 (笑) 「ほら 多機能じゃない!」


教育においても 私達には囚われていることがあります 例を挙げましょう ひとつは 一本道という考えで スタートして規定のコースを走り すべて正しくやれば あとの人生は安泰というものです TEDで講演した人はみんな 暗に あるいは明確に それとは違ったことを言っています 人生は一本道ではなく もっと絡み合っているものです 私達は自分の才能を追求する中で 成長の助けとなる周囲のものと 共生的に生きています しかし私達は一本道という 考えに囚われており 教育の最大の山場は 大学に入ることだと思っています それも特定の大学に 入学させようという考えにとりつかれています 大学に行くなと言うわけではありません 全員が すぐに行く必要はないということです もう少し後でも良いかもしれません


しばらく前に 本のサイン会のため サンフランシスコに出かけました 本を買ってくれた ある30代の男性に 「お仕事は何を?」と尋ねました 「消防士です」 「消防士をやって長いんですか?」 「ずっとです 昔から消防士をしています」 「なろうと思ったのはいつですか?」 「子供の時です 実のところ学校では問題がありました みんな消防士になりたいと言いますからね」 「でも私は本気で消防士になりたかったんです」 「高校3年生になったとき 先生方は私の進路希望を本気にしてくれませんでした」 「全然まともに取り合ってくれない先生がいて その先生は言いました "消防士なんて 人生を棒に振るようなものだ 大学へ行って 専門を身につけなさい 君には素晴らしい可能性があるんだから 才能を無駄にするんじゃない"」 「クラスのみんなの前で言われたので すごく屈辱的で 嫌な思いをしました でも 私はどうしても消防士になりたかったのです 卒業するとすぐに 消防士に志願して念願を果たしました」 「あなたが先ほど話をされていたとき 私はその先生のことを思い出していました」 「というのも 6ヶ月前のこと 私はその先生の命を救ったからです」 (笑) 「先生が自動車事故に遭って 私が救出して蘇生救命措置をしたんです 奥さんの命も救いました」 「今では多少は見直してくれたんじゃないかと思います」


(笑)


(拍手)


私は思うのですが 人間社会は才能の多様性によって 成り立っています 単一の能力によってではありません 私達にとっての課題は... (拍手) 私達にとっての重要な課題は 能力と知性についての私達の考え方を 再構築することです 一本道という考え方に問題があります


私が9年ほど前 ロサンゼルスに移ってきたとき 次のような標語に出逢いました 善意で作られたものでしょうが 「大学は幼稚園から始まる」というものでした まさか 違いますよ (笑) 大学は幼稚園からは始まりません 時間があればお話ししたいところですが やめときます (笑) 幼稚園は幼稚園から始まるのです (笑) 私の友人が以前言っていました 「3歳児は6歳児の半分ってわけじゃない」 (笑) (拍手) 3歳児は3歳児なのです


ですが 先のセッションで聞いたように 現在は「良い」幼稚園に入る競争が とても熾烈になっているので 入園面接もあります 3歳児ですよ 子供たちが 無表情な面接官の前に座ります 面接官は履歴書を手に (笑) ぱらぱらとめくりながら言います「これだけですか?」 (笑) (拍手) 「36ヶ月間生きてきて たったこれだけですか?」 (笑) 「確たる実績が何もありませんね 最初の6ヶ月は授乳を受けていただじゃありませんか」 (笑) 考えただけでも馬鹿げていますが みんなそれに引かれるのです


もう一つの問題は画一性です 私達は教育システムを ファーストフード産業をモデルに構築しました そのことについては ジェミー オリバーが先日講演しました 外食産業には 二つの品質保証モデルがあります その一つは ファーストフードで すべてが標準化されています もう一つは ザガットやミシュランのレストランで 標準化されず その地方の特色を生かしたサービスを提供します 私達は教育のファーストフード化を推進してきました ファーストフードが私達の肉体を蝕むように 教育が私達の精神と活力を蝕んでいます


(拍手)


ここで いくつかの事項を確認したいと思います 一つは 人間の才能は途方もなく多様性に満ちていることです 人の才能は皆異なります 最近分かったことがあります 私は子供の頃ギターを買ってもらいましたが 同じ頃に エリック クラプトンも最初のギターを手にしていたんです 私に言えるのは まあエリックにはうまくいったね ということです (笑) 私はダメでしたけど 良い音色は出ませんでした いくら一生懸命に吹いても まったくダメでした


でもそれだけではありません 情熱が違ったのです 人は本当に好きなことに上達するものです 情熱が大切なのです 精神と活力をたぎらせるものが大事なのです 大好きなことや得意なことをしているときには 時間の過ぎ方が異なります 妻は最近小説を書き上げました 傑作です 執筆に没頭すると 何時間も姿を消してしまいます ご存じでしょう 何か本当に好きなことをしていると 1時間が5分ほどに思えます 一方で 心に響くものがなければ 5分が1時間に感じられます 多くの人が教育を見限るのは 教育が心の糧にならないからです 活力や情熱をかき立てないからです


ですから 教育のモデルを変える必要があります 教育を 工業的 製造業的モデルから 脱却させる必要があります このモデルは 直線的 画一的であり 人を一緒くたに扱います このモデルを 農業的原理に基づくモデルに変えねばなりません 人がその才能を花開かせるのは 機械的で自動的なプロセスではなく 「有機的」なプロセスだと捉える必要があります 人の成長の結果を予言することなどできません できることは 農夫のように 花開く条件を 整えることだけです


教育の改革 変革は 同じシステムのコピーではできません KIPPのような 個別指導を特徴とする 素晴らしいモデルが いくつもあります 個々の状況や 実態に合わせて 教育を個別化することが大切です これが未来につながる 解決方法です 無理を押して新たな解決策を求めるのではなく 個人個人のカリキュラムに基づき 外的な支援を得ながら 皆がそれぞれの状況に合わせ 解決策を探求できる運動を教育の場に作り出すことです


このホールには ビジネス、マルチメディア、インターネットなどの 素晴しいリソースを持った 人たちが集っています これらの技術を 優れた教師の能力と合体させることで 教育に革命を起こすことができます この教育革命に皆さんも参加してください 私達ばかりでなく 私達の子供たちの 未来のために ぜひとも必要なことだからです 教育は 工業的なモデルから 農業的なモデルへと変わらねばなりません そうなれば 学校はすぐに生気を取り戻すでしょう そこで子供たちは本来の生き方を見つけるのです ホームスクーリングならば家庭で 家族や友人達に囲まれて生き方を見つけます


この大会では 多くの方々が夢について語っています ここでちょっとご紹介したいのですが 昨夜 ナタリー マーチャントが 古い詩を歌ったのに感激したので 私もちょっとだけ 短い詩をご紹介します W. B.イエイツの詩です 誰だかご存じですね この詩は恋人のために書かれました モード ゴンです イエイツは自分が貧しくて 彼女の欲しいものを何もあげられないことを嘆いています 「君に贈り物があるけれど 喜んではくれないだろうね」


そして 「もし私に 金と銀の光が 縫い込まれた 天の布があったなら 夜と薄明と昼を表す 漆黒と灰色と空色をした 天の布があったなら その布を あなたの足下に広げましょう でも 貧しい私には 夢しか持ち合わせがないので 私の夢を あなたの足下に広げます どうかそっと歩いてください 私の夢の上なのですから」 毎日 世界中で 子供たちが私達の足下に夢を広げているのです 私達はその上を優しく歩まねばなりません


ありがとうございました


(拍手)


どうもありがとうございました


ケン・ロビンソン卿の今回の講演は、2006年のTEDにおける今や伝説的となった講演の続編です。洞察に満ちユーモアあふれるこの講演で、ロビンソン卿は、型にはまった学校教育から脱却し、子供の個性を重んじる教育へと抜本的に変革する必要を説いています。そのような教育環境のもとでこそ、子供たちの生まれ持った才能は花開くのです。 ( translated by Haruo Nishinoh , reviewed by Yasushi Aoki )

動画撮影日:2010/2/6(土) 0:00
TED