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ハシニ・ジャヤティラカ: どうやってがん細胞が情報伝達を行い、 私達はそれを食い止められるか

1/9(水) 9:37配信

TED

Hasini Jayatilaka

翻訳

がん それは深い哀しみをもたらす 破滅的な病気です 患者のみならず 愛する家族にとっても― がんとの戦いは数世紀に渡って 人類が続けてきた闘争です 私達は ある程度の 前進を遂げてきましたが 未だに打ち負かす事は 出来ずにいます アメリカでは5人に2人が 生涯の内で がんに罹ります その内 90%の人達が転移の為に がんで亡くなっています


転移とは 血液循環や リンパ系を通した 原発から遠隔までの がんの広がりの事です 例えば 乳がんの女性患者は 単に胸に出来た腫瘤で 亡くなるのではありません がんが肺、肝臓、リンパ節、脳、骨 に広がり そこでがんは障害を起こし 治療も出来ずに 亡くなるのです 転移とは 複雑な過程です これまで 数年に渡って研究を行ってきました 我がチームが 最近発見したのは がん細胞は お互いに情報を交換し 自分達がどれくらい密に腫瘍の中に 詰め込まれているかを基に その動きを 協調させている事です がん細胞は2つのシグナル分子― インターロイキン6と8を通して 情報の伝達を行っています


さて 自然の中の 他の全てのものと同様 窮屈になると 信号が増強され がん細胞は 原発部位から離れて 新しい部位に広がる速度を速める 原因となるのです そこで この信号を私達が開発した カクテル(薬の組み合わせ)を使って阻止すれば がん細胞同士の情報伝達を阻止し がんの広がりを 遅くする事が出来るのです ちょっと ここで一息ついて 私にとって 全てが始まった 2010年に遡りましょう 私は大学2年生でした ジョンズ・ホプキンス大学の ダニー・ワーツ博士の研究室で 研究を始めたばかりでした 正直言って 私はまだ若くて うぶな スリランカの女の子で


(笑)


研究の経験は 全くありませんでした がん細胞が 培養皿の中に再現された I 型コラーゲンの 3次元マトリックスの中を どのように動くか 観察するよう指示されました これはがん細胞が体内で 曝されているのと同じ条件です 私はそれが目新しくて ワクワクしました それまでの実験は 体内でのがん細胞の様子を 正確には再現していない 2次元の平面的な プラスティックの培養皿で 行っていたからです 実際のところ 体内のがん細胞は プラスチックの 培養皿の上になど 乗ってはいません その頃 プリンストン大学の ボニー・バスラー博士のセミナーに 出席しました そこで彼女は 細菌が その密度に基づいて どのように 互いに情報伝達をし 特定の行動を とるかについて話をしました


頭の中の電球が閃いた この瞬間 私はこう思いました 「あぁ 動きと言えば 私は毎日 がん細胞の動きを 観察しているわ」 私のプロジェクトのアイディアは こうして生まれました がん細胞は 腫瘍の微小環境の中で どれ程 密に詰まっているかに基づき 互いに情報伝達ができ その動きを協調させるのだという 仮説を立てました 私はこの仮説を追求する事に 取り憑かれました そして運良く この奇抜な考えに 付き合ってくれる 余裕がある人と 研究をしています そこで私は このプロジェクトに没頭しました


しかしながら この研究は 自分1人では出来ませんでした 私には助けがー 絶対的に助けが 必要だったのです そこで 私が大学2年生で思いついた このアイディアに 一緒に取り組んでくれる 異なる施設や 多様な学科からの 大学生や大学院生 ポストドク研究員、教授に 私達は協力を募りました


彼らと共に 数年実験を行い 異なる概念や観点を 融合させた後 がん細胞がどうやって互いに 密度を基に 情報伝達を行い 移動するかを制御する 新たなシグナル伝達経路を 私達は発見したのです 耳にした方が いるかも知れません SNSではこれを「ハシニ効果」と 呼んでいますから


(笑)


(拍手)


それで終わりではありませんでした その後 私達はこのシグナル伝達経路を ブロックし がんの広がる速度を 落とすことが出来るかどうかを 確かめる事にしました 私達はこれを 臨床試験前の動物実験として行いました 私達はトシリズマブを含めた カクテルを思いつきました これは現在 関節リウマチの 治療に使われています レパリキシンは 現在乳がんに対する 治験が行われています 又 興味深い事に このカクテルは 実際 腫瘍の増大には 何の効果もないものの 転移を直接 標的にする事が 分かりました これは重要な発見でした 現在 直接がんの広がりを 標的にする FDAが承認した治療薬は ないからです


実際 がんの広がり―転移は 腫瘍増大の副産物と 考えられているのです そこで 腫瘍の増大を 食い止められるなら 腫瘍の広がりも止められると 考える訳です しかしながら これは 事実ではないと分かっています 一方 私達は腫瘍の増大を 標的にする事によってではなく それを支配する複雑なメカニズムを 標的にする事によって 転移を標的にする薬のカクテルを 思いついたのです ハシニ効果を標的にして―


(笑)


この研究は最近『Nature Communications』に掲載され 私達のチームは 世界中から 圧倒的な反響を受けています チームの内誰も こんな反応があるとは 予想していませんでした 多くの研究者の心をとらえたのです 振り返ると 私は学者からだけでなく この恐ろしい病気に冒された 世界中の患者達からの支持を 大変有難いと思っています


ハシニ効果との出会いという この成功を思い起こすと 幸運にも 共同研究できた人達が 常に思い出されます その勤労と献身とを通して 超人的な力を見せてくれた大学生達 大学院生やポストドク研究員 私に新たな技術を教え 仕事が順調に進むようにしてくれた 私の仲間 アベンジャーズです 私にとっての ヨーダや オビ=ワン・ケノービである教授達が 自らの専門知識をこの研究に 活用してくれたお陰で 今の成功があります サポートスタッフ、友人、家族― 彼らは士気を高め 私達の大がかりな活動を 決して諦めないよう 導いてくれた人達です 私達が求め得た最高の仲間達です 私が転移の研究をする手助けを してくれたのは共同体でした 共同体がなければ 絶対に 私はここまで来れなかったでしょう


こんにち 私達のチームは 成長を遂げ 腫瘍の増大と転移を 効果的に標的にする 組み合わせ治療の開発に ハシニ効果を利用しています 私達は 薬物毒性を抑え 薬剤耐性を減らす 新たな抗がん治療薬を 作ろうとしています 更により良いヒトへの臨床治験 開発の手助けとなる 画期的なシステムを 開発しています 現在自分が探求している 想像を超えた研究の事や 今日このステージに立って 皆さんにお話ししていることが 全て 私がまだ20歳の時 セミナーの後ろの席で思いついた 些細なアイディアから 生まれたと考えると 驚きを禁じえません


私は今まさに 大きな情熱を傾ける研究に邁進でき 毎日 好奇心を 掻き立てられる 驚くべき道のりの 途中にいます ただ 間違いなく 私が一番気に入っていることは― 勿論 皆さんにここで お話しできることを除いてですが― 研究をより確固たるものにし 何にもましてずっと面白くしてくれた 多様な人達のグループと共に 私は研究をしてきたという事実です そこで こう言わざるを得ません 協力とは 私が大好きな 超人的な力です この力を 私が気に入っているのは それが 自分だけに備わったものではなく 私達皆の中にあるものだ という事です


がん細胞でさえ 人間の身体を侵し 被害を広げる為には 協力し合うものだと 私の研究で 明らかになりました 私達人間にとって 医学的 科学的な分野で 途方もない発見を 生み出してきたのは この超人的な力です 私達皆が 自分自身よりも 大きなものを創造し 世界をより良いものにする 手助けとなるよう 促す為に 頼りに出来るものは この超人的な力なのです 協力とは 私ががんと闘う手助けとなり 頼れる超人的な力なのです 適切な協力があれば がんに打ち勝つのだと 私は確信しています


ありがとうございました


(拍手)


がん細胞が腫瘍内に密に詰まっていると、細胞は互いに情報の伝達を行い、体内での動きを協調させる事が出来るのです。もし私達がそのプロセスを阻止出来るとしたらどうでしょうか?この最先端科学に関する、分かりやすいトークの中で、ハシニ・ジャヤティラカは、がん細胞の情報伝達を止め、他の部位に転移して死に至らしめる能力を止める革新的な方法への取り組みについて語ります。 ( translated by Shoko Takaki , reviewed by Masaki Yanagishita )

動画撮影日:2017/10/27(金) 0:00
TED